- 戸田市
総務部次長兼情報政策統計 課長
総務省地域情報化アドバイザー - 大山 水帆 氏
導入したきっかけ
「自治体サービスの標準化」が最大の課題
今までも行政システムの最適化に取り組んできましたが、その最大の課題は標準化だと考えています。たとえば住⺠の問い合わせに答えるチャットボットも、各⾃治体がそれぞれ独⾃のしくみを作っているようでは、業務効率はもちろんのこと、利便性も向上しません。⾃治体が単独で⾏えることには限界があります。数多くの⾃治体が参加できる共通の基盤が必要だと考えました。
そこで着目したのが、三菱総合研究所が提案した「行政情報標準化・AI活用研究会」でした。この研究会は、今後の自治体における AI 活用について、自治体と共に検討していくために設置されたものです。この研究会であれば、制度全体を構造化するためのノウハウの共有が可能であり、さらに研究会が開発したシステムであれば、ナレッジの継続的な更新も可能だと判断しました。2018 年 1 月にこの研究会に参加し、2019 年 2 月には庁内向けのテスト利用、同年 3 月には市民向けのテスト利用を行って有用性を確認した上で、 2019 年 4 月から本格運用を開始しました。
職員・住民の反応
チャットは電話よりも気軽
市の公式ホームページのトップページに「AIスタッフ総合案内サービス」のバナーを貼り、ここから AI チャットボットへと誘導しました。本格運用を開始した 2019 年 4 月の月間利用者数は約 600 人に上り、合計で約 2,400 件の質問が行われました。
電話による問い合わせは市民にとってもハードルが高く、チャットの方が気軽に行えると考えています。「AIスタッフ総合案内サービス」はスマートフォンへの対応もきちんとなされており、ホームページを検索するよりも目的の情報を見つけやすくなりました。実際に住民の皆さまからも、これは便利という声もいただいております。あるのは導入メリットだけで、デメリットがまったくないシステムだと言えます。
1,500 以上の標準 QA が用意されており、庁内の反発もなし
導入がスムーズに進んだことも、この事例の注目すべきポイントだと言えます。新しい仕組みの導入では庁内で反発が生じすることが珍しくありませんが、今回は関連部署が積極的に協力してくれました。
標準の質問案が既に 1,500 以上も揃っており、それをチェックするだけで良かったため、協力が得やすかったのだと思います。もし質問案作成を各担当が行うことになっていたら、それなりの抵抗感はあったはずです。庁内向けのテスト利用でも職員が積極的に使ってくれました。導入や利用のハードルが低く利便性が高いことも、自治体にとって重要な要件です。
導入効果
月 45 万円の削減効果、市のホームページの改善にも繋がる
本格運用を開始した 2019 年 4 月から同年 10 月までの月間利用者数の平均は 650 人以上に上り、月間質問数の平均は 3,000 件以上でした。定量的効果を計算した結果、月約 45 万円の削減効果がありました。利用者が増加すれば、導入効果もさらに拡大すると期待しています。
また、これだけの数の質問をチャットボットで対応できたということは、その分だけ職員による電話対応の負担が軽減されたことになります。さらに標準的な質問項目と照らし合わせることで、ホームページの情報が不足している部分の可視化ができ、ホームページの改善につなげることができます。