Region-Tech 構想

Region-Tech構想

Region-Tech構想とは ~三菱総研グループの取り組み~

三菱総研グループでは、デジタル技術を活用して地域課題の解決に挑む「Region-Tech構想」の実現を目指し、サービスの開発・提供をしています。

Region-Tech構想の基本理念は次の 3 つです。
地域課題を解決して持続可能な地域づくりを目指すため、「住民コミュニケーション」を促進
全国の自治体で利用できる標準型・共同利用型サービスとして提供
住民の声と行政施策の連携を強化し、現状の問題解決だけでなく将来予測される課題やリスクを予見し、事前に対応することも目指す
Region-Tech構想

Region-Tech構想の必要性

住民コミュニケーションのデジタル化
地域におけるデジタル技術の活用は様々です。行政分野においては、個別業務や内部管理系業務についてはシステム対応が徐々に進みつつありますが、 非定形の住民コミュニケーション関係は、電話や対面などアナログな対応がまだまだ主流で、このデジタル化が課題と考えられます。住民コミュニケーションのデジタル化は、住民ニーズの把握・活用や、業務・サービスのデジタル化につながります。
また、最近の若年層のコミュニケーション手段は、対面や電話からメールやソーシャルメディアに比重が移行しています。このようなコミュニケーション手段の変化に対応して、住民とのコミュニケーションの低下を防ぐ必要があります。
AIチャットボットなど普及技術の活用
スマートフォンの普及により、住民の情報取得・活用方法が大きく変わろうとしています。加えて、AIチャットボットなどの新しい情報技術が実用可能なレベルに達しています。これらの活用可能なツールや技術を最大限に活用して、住民とのコミュニケーションのデジタル化に取り組むことが考えられます。
標準化と共同利用
これまでの行政機関は、独自主義・自前主義の傾向がありました。しかしこれからは、限られた予算や人材で行政サービスの維持・向上を図る必要があります。そのためには、行政内部の業務改革・サービス改革とデジタル化に取り組むとともに、独自主義・自前主義をやめて、複数の自治体でサービスを共同利用する形に変えていく必要があります。そのためには、業務・サービスや情報の標準化が必要になります。

行政情報標準化・AI活用研究会

Region-Tech構想の実現に向けて、特に行政機関でのAI活用を考えるため、「行政情報標準化・AI活用研究会」を立ち上げました。単にAI活用研究会とせず、頭に「行政情報標準化」とつけたのは、とにかく独自主義を脱して共同利用を進めるために標準化を図ることを強調するためです。行政情報標準化やAI活用の情報共有・意見交換、先進自治体の事例紹介等を行っています。研究会には、2019年12月末時点で98団体に参加していただいています。

行政情報標準化・AI活用研究会

「行政情報標準化・AI活用研究会」
第 3 回オフラインミーティングの様子 ( 2018.05.30開催 )

コラム

住民サービスDXセミナー(1/25)開催報告

2021.2.19

1月25日に当社主催の住民サービスDXセミナーを開催しました。
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
簡単ではございますが、講演の内容をご紹介します。

【講演1】 スマートで豊かな地域づくりに向けた地域DXの実現に向けて

~地域課題解決型デジタル地域通貨サービス”Region Ring”の実装事例のご紹介~
三菱総合研究所 早川 玲理

  • 三菱総合研究所では、地域をつなぎ、新しいアクションを創りだすことを目的としたデジタル地域通貨プラットフォーム「Region Ring」を開発。
  • スマホアプリによるQRコードの読み取りにより、通貨・ポイントの流通ができる仕組み。インセンティブ等を活用しながら個人の行動変容を促すことで様々な地域課題を同時に解決することが可能。
  • 近鉄ハルカスコイン、東京ユアコインとして実証し、消費促進、客単価増加、SDGs活動の誘発、紙と比較した場合のコスト削減などの効果を確認。
  • 今後は、地域通貨・ポイント・福祉サービスの給付など、様々な住民向けサービスを一体で提供し、住民サービス向上と導入コスト削減を目指す。

【講演2】 DXがもたらす自治体相談業務の変革と展望

~AI相談パートナー実証事例のご紹介~
横須賀市経営企画部デジタル・ガバメント推進室 板井 健一郎 様
三菱総合研究所 青木 芳和

  • 相談業務支援サービスとして三菱総合研究所では株式会社アイネスと共にAI相談パートナーを開発。リアルタイムの会話記録、相談票作成支援、職員をサポートするガイダンス表示等が可能。
  • 横須賀市では「誰も一人にしないまち」を掲げており、福祉の総合相談窓口を設置。AI相談パートナーの実証を開始した。また、ひとり親家庭への貸付相談業務でも利用。
  • 実証の現時点での状況としては、市民からは「しっかり記録してもらえるので安心」といった理由からAI相談パートナーの利用を断られるケースはない。一方で職員側としては、初めてのAIサービスということで慣れが必要といった意見も出ている。

【基調講演】 自治体DXの推進(健康・医療・介護の分野から)

内閣官房IT総合戦略室 参事官 山田 栄子 様

  • デジタル・ガバメント閣僚会議などで行政の新たな在り方に関して政府が言及。行政の縦割り打破、大胆な規制改革の断行、国民目線のデジタル改革といったことがキーワードとして取り上げられた。
  • 健康・医療・介護の分野においてもAI技術等の活用に向けた事業が行われており、その一つが「スマート介護予防プラットフォームの構築」。科学的根拠に基づいた介護予防に資する取り組みの社会実装を目指し、主に通いの場(地域介護予防活動支援事業)で利用できるデータ連携基盤を構築。
  • 通いの場での日々のデータを集積することによって、要介護リスク予測AIや認知症予防AI等の検討が行われた。
  • 今後はデータ等を使った新たな介護予防の検討が必要となり、民間のデータ活用や医療介護レセプトのデータ活用も望まれる。

【特別講演】 自治体DX時代における個人情報保護条例の一本化に向けて

中央大学 国際情報学部教授 石井 夏生利 様

  • 総務省・自治体DX推進計画に基づいて自治体のDXもさらに加速することが予想される。
  • 内閣官房・個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォースにおいては地方公共団体等の個人情報保護制度の在り方についてまとめられ、改正の方針が打ち出された。
  • 共通ルールによっていわゆる「2000個問題」を解消し、「個人情報保護」と「データ流通」の両立をするが一つのテーマ。

住民サービスとマーケティング 【2】

2021.1.8

AIチャットボットをはじめとした住民向けのサービスの利用促進として、前回は認知度向上策についてご紹介しました。今回は「②はじめて利用するきっかけ作り」についてを取り上げたいと思います。

② はじめて利用するきっかけ作り

サービスの普及戦略を考えるとき、まず、何のきっかけもなく新しいものを積極的に利用する人は少ないということを念頭に置かなければなりません。

マーケティング理論の一つである「イノベーター理論」では、消費者を5つのタイプに分類し、新しものを積極的に採用するタイプを「イノベーター」「アーリーアダプター」としています。自治体であれば広報紙を熟読してイベントにも積極的に参加する等の行動をするような住民にあたるでしょう。実はこの2つのタイプは約2割程度の消費者にすぎません。多くの人は新しいものに対して慎重な姿勢を示します。

新しいものに積極的でない人に利用を促していくのに必要なのが、「利用のきっかけづくり」です。まずは一度利用してもらうことでサービスの便利さを伝え、何度も利用してもらうようにすることが大切です。

きっかけとなる施策の具体例をご紹介します。

【具体的な利用方法を提案】

サービスを告知する際に、具体的な利用方法を提示してみるのも有効と考えられます。例えば、チャットボットであれば「アクセスして●●と検索してみましょう」と具体的な行動を示すことで、漠然と「サービスを使ってください」という説明と比較して行動を起こしてもらいやすくします。
また、「●●と話しかけるとどんな反応をするか試してみましょう」という形やクイズ形式にするといった方法で、住民に関心を持ってもらえるような伝え方をするのもポイントです。

【住民の関心の高い施策・イベント等に絡めて告知】

最近であれば新型コロナウイルス関連の情報を調べる際にチャットボットの利用を推奨するなど、住民の関心が高いテーマをきっかけとして利用を促す方法も考えられます。
新型コロナウイルス関連のページに「どのページを見てよいかわからないときには、チャットボットを使ってみてください」といったメッセージを出すのも良いかもしれません。

【職員がサービスへ誘導】

オンラインでの告知や紙媒体での宣伝だけでなく、実際に人がサービスについて伝えることも重要です。窓口での対応の最後に、サービスの説明チラシを渡すとともに職員が声掛けをすることがきっかけとなる可能性があります。

【セミナーやイベント等での利用促進】

自治体内で行われるセミナー・イベントで紹介し、実際にその場で使ってもらうのも良いでしょう。チャットボットの場合は、その場でスマートフォン・携帯電話を開いてもらってアクセスしてもらう方法も考えられます。

以上の通り、普及に向けては「まずは使ってもらう」ということも意識して施策展開することが求められます。

住民サービスとマーケティング 【1】

2020.12.4

AIチャットボットをはじめ、住民向けのサービスを導入した後に重要なのが利用促進の働きかけです。特に住民に浸透させていくポイントとなるのが、①複数のチャネルを通じた認知度向上、②はじめて利用するきっかけ作り、③自治体職員内での普及です。

今回は「①複数のチャネルを通じた認知度向上」についてご紹介します。

① 複数のチャネルを通じた認知度向上

まずはサービスを知ってもらうために広報活動をしていく必要があります。一般的な商品マーケティングでも消費者の行動が多様化する近年においてはTVCM、店頭ポスター、YouTubeなど消費者へ様々なメディアで商品訴求するクロスメディア戦略と言われる手法が効果的と言われています。自治体でのサービス認知度を向上させる場合にも、このクロスメディアの考え方が有効です。例えば、広報誌、Webサイトなどへの掲載が自治体の広報手段として考えられますが、次のような広報活動も考えられます。

【リアル】

  • 庁内でのポスター掲示
  • 庁内の各窓口での案内、チラシ配布
  • 街の掲示板へのポスター掲示
  • コンビニ、公共交通機関内へのポスター掲示
  • イベント等でのチラシ配布、告知
  • 電話問合せの住民の方へのご案内

【デジタル】

  • Webサイトへの掲載(バナー設置、フローティング表示など)
  • Twitter/Facebookでの発信
  • 首長等からのオンラインでの情報発信
  • LINE公式アカウントとの連携

住民が行政にアクセスするタイミング、日常生活の中でサービスを認知してもらう機会を増やすことがサービス利用拡大の第一歩です。

住民は深夜でも情報収集

2020.10.30

「AIスタッフ総合案内サービス」では、3月から新型コロナウイルスの問合せ対応を開始し多くの住民の方にサービスをご利用いただきました。

導入団体様でのデータを分析したところ新型コロナウイルス関連の問合せは9時頃~17時頃が多く、最も多く利用された時間帯は16時台でした。今回の新型コロナウイルス関連の問合せの特徴的な点として、問合せ数の多い「ゴミ」や「子育て」の分野と比較して深夜0時~3時といった時間にもチャットボットが利用されていたことが挙げられます。新型コロナウイルスは住民の関心が特に高い分野ですが、日中は仕事などでなかなか検索をしたり情報収集をできない住民が夜間にも情報収集をしているということがデータからも明らかとなりました。

深夜は電話問合せができないため、チャットボット・Webサイトの閲覧のみで情報提供が完結できるよう十分に情報掲載をしておく必要があります。

深夜(0時台~3時台)に多かった問合せの内容は、全時間帯と同様に「特別定額給付金」や「新型コロナウイルスの感染状況」でしたが、深夜の問合せで上昇傾向となったのが「新型コロナウイルス拡大の支援策」「新型コロナウイルスの発生が原因で収入が減り、生活に困っている」という問合せです。

収入不安等によって支援策を探すために夜間に情報収集をされいた方が一定数いたと考えられます。
こうした住民に対応するために、今後は夜間のうちに住民が相談しやすいような窓口(メールや問合せフォーム等)を設置するといった施策の検討が必要になってくるかもしれません。

問合せの時間別割合(分野別)

国勢調査の問合せもチャットボットで対応

2020.9.11

9月から国勢調査が開始されます。
各自治体においても国勢調査の実施に向けて準備をしているところかと思います。

平成27年国勢調査においては、統計局の公表によるとコールセンター宛てに147万件(世帯専用コール)の問合せがあったそうです。

「AIスタッフ総合案内サービス」のユーザーの皆様からも「チャットボットで国勢調査の問合せ対応ができないか」といったご要望をいただき、先月から国勢調査に関するQAの追加対応を開始しました。
新型コロナウイルスと同様に、国勢調査に関する標準的な質問・回答のセットを準備して、すぐに対応できるような仕組みとなっています。

また、自治体への問合せが急激に増えた「マイナポイント」もチャットボットの新たな対象分野となりました。

今後も「AIスタッフ総合案内サービス」では随時対応分野を拡大していく予定です。対応分野のご要望がありましたら、事務局までご連絡ください。

ポスト・コロナ時代の行政サービス/総務省・自治体AI共同開発推進事業

2020.8.3

(1)ポスト・コロナ時代の行政サービス

当社事務局の行政情報標準化・AI活用研究会では、7月に「ポスト・コロナ時代の行政サービス」をテーマにWeb会議ツールを利用したオンライン研究会を開催しました。

全国から24自治体の方にご参加いただき、特別定額給付金申請受付業務等を含む新型コロナウイルス感染症に伴う業務の課題や対応策の情報共有、今後の行政サービスのあり方に関するディスカッションを行いました。

研究会の中で挙がった今後の課題をご紹介します。

【ポスト・コロナ時代の行政サービスに向けた課題】

  • 職員の在宅勤務:在宅勤務用の端末確保や人事制度の整備が必要。
  • 住民向け相談業務のオンライン化:現場職員からの要望が増えている。利用ツールのセキュリティやオンライン(Web会議ツール利用)での機微情報の取り扱いルールの検討が必要。
  • 住民への情報提供体制の構築:日次で更新される感染者数情報や給付金に関する情報、小中学校・幼稚園・保育園等の休校休園に関する情報など、住民が必要とする情報を効率的に整理して公開する仕組みが必要。今後もAIチャットボットを活用することで対応。
  • 電子申請への対応:住民が利用しやすく、自治体での確認業務負担が少なくなるような電子申請の仕組みが必要。マイナンバーカードの普及は課題(今回はRPA、AI-OCRなどのツール活用により工夫)。

特に議論が活発だったのは相談業務のオンライン化です。
保健師による住民の健康相談・子どもの発達相談・妊娠届提出時の面談などをはじめ、相談業務は対面で行われることが一般的ですが、新型コロナウイルス感染対策の影響で通常通りの相談対応ができない状況となったという自治体が多数ありました。
現場の保健師から「オンラインでの相談対応ができないか」といった要望があり、急遽オンラインでの相談体制を整えたという団体もありました。
今後、ポスト・コロナ時代ではますますオンライン相談のニーズが高まることが予想されますが、セキュリティが担保されたツールの選定や、機微情報を含む住民の相談情報のオンライン上での取り扱いのルール整備がまずは対応必須との意見が出されました。

(2)総務省・自治体AI共同開発推進事業

自治体でのAI導入推進を目的として総務省で「自治体AI共同開発推進事業」が実施されています。
本事業では自治体で収集・蓄積されたデータをインプット情報としたクラウド型AIサービスの実証が行われる予定で、先日、令和2年度の実証グループが公表されました。

実証グループの一つである「AIを活用したクラウド型スマート窓口の共同システム開発事業」には当社も参加し、AIチャットボットを利用した住民向け申請書作成システムや、AIを使った申請審査支援システムの開発・実証を行います。
また、実証と並行して、AIサービスのセキュリティ面の標準仕様や適切なデータの受け渡し等を整理した「クラウド AI 導入に当たっての標準仕様及び手順書」も策定される予定です。

新型コロナウイルス関連問合せ件数ランキング

2020.7.9

三菱総研が提供している自治体向けチャットボットサービス「AIスタッフ総合案内サービス」では、新型コロナウイルス感染症・特別定額給付金に関するFAQを随時追加し、チャットボットでの住民問合せ対応を行っています。弊社分析によると、チャットボットご利用団体での新型コロナウイルス感染症関連の問合せは大変多く、チャットボットに寄せられる相談件数は通常の約3倍 (本年1月以降) となり、多くの住民がチャットボットを通じて新型コロナウイルス感染症や特別定額給付金に関する情報収集・問合せをしていることが確認できました。

特に質問件数が多かったのは、「新型コロナウイルスについて」「特別定額給付金」「自治体内での新型コロナウイルス感染状況」です。

【新型コロナウイルス関連問合せ件数ランキング】

※FAQデータのうち、新型コロナウイルス感染症関連の該当質問

  • (1)新型コロナウイルスのことについて知りたい
  • (2)新型コロナ対策として給付される特別定額給付金 (10万円) について
  • (3)新型コロナウイルスの発生が原因で収入が減り、生活に困っています
  • (4)新型コロナ対策の特別定額給付金 (10万円) はいつもらえますか
  • (5)新型コロナウイルス感染の検査を受けたい

この他、問合せ件数が多かった項目としては「小中学校等の休校」や「感染予防について」でした。

自治体においては、住民からの問合せ内容を把握・分析し、住民ニーズに応じて自治体のWebサイトの構成変更をしたり、LINE等を活用してプッシュ型で情報発信をしていくことが今後求められます。

サービス提供
  • 株式会社三菱総合研究所
  • 日本ビジネスシステムズ株式会社
販売代理
株式会社アイネス